Phase013 【ロケ地】川崎市麻生区多摩美/多摩美界隈②『かしわや』

【かしわや】

かつて、『小田急線/読売ランド前駅』から『東映生田スタジオ』(跡地)への道中に、一軒の駄菓子屋が建っていた。
昭和の香りを漂わせるそのお店は、店名を『かしわや』といった。

小さな社交場に、小銭を握りしめた子供たちが集う。
上下左右、所狭しと並べられた駄菓子の群れに、子供たちの目は往ったり来たり。
その子供たちを優しく見つめるのは、店主の柏倉ミエ子さん。
中には、その日あった学校の出来事を夢中で話し聞かせる子供たちも。
相槌を打ちながら、頬を緩める柏倉さん。
買い物に立ち寄らない子供たちも、必ず挨拶だけはしていく。
たくさんの子供たちから親しまれ、慕われていた柏倉さん。
そんな光景を何度、目にしただろうか・・・。

2016年・夏―。
柏倉ミエ子さん、他界。
間も無くして、『かしわや』は取り壊されてしまった・・・。

今回は、哀悼の意を込め、故・柏倉さん、『かしわや』に纏わる思い出を綴りながら、その考証を行ってみたいと思う。

2004年4月29日、『マンションニューランド』(『東映生田スタジオ』御用達の名ロケ地の一つ。後日、改めて取り上げる予定)を後にした愚生と我が息子は、休憩を取るため遠方に見えた一軒のお店へと向かった。
それが『かしわや』、そして柏倉さんとの出会いだった。
愚性は缶コーヒーを飲み、息子はチョコチップの入ったアイスクリームを店先で頬張っていたが、その時、ふと頭を過ぎったのが、『仮面ライダー』第76話「三匹の発電怪人シードラゴン!!」に登場する「怪獣のカンヅメ・モンスター」を販売するお店。
迷わず、そのお店=『かしわや』か?と、柏倉さんに尋ねてみることに・・・(実際は違っており、このお店についても、後日、改めて考証を行う予定)。
以来、この地を訪れる際には必ず『かしわや』にも立ち寄り、楽しい時間を過ごさせて頂くこととなった。

お会いする度に、色々と面白い話をしてくださった柏倉さん。
中でも興味深かったのは、当時、『東映生田スタジオ』には見学に訪れる子供たちが後を絶たず、『仮面ライダー』制作時には、「変身ベルト」が盗まれることも少なくなかったというお話。
お店の前をそれらしき子供が走って行かなかったかと、慌てたスタッフらが血相を変えて尋ねてくることが度々あったという。
また当時は、コンビニという形態のお店が存在しなかったため、撮影が深夜にまで及んだ場合、「何か食べ物を売ってください!」と、夜食を求めてシャッターを叩くスタッフも少なくなく、時には夜中の0時を回ることもあったとか。
柏倉さん曰く、「今のご時世なら恐くて出られませんが、あの時代はそのような事もありませんでしたし・・・。それに、私も若かったので、いくら寝ていても、ちゃんと起きて応対していましたよ」とのこと。

その他にも、佐々木剛、天本英世(柏倉さんは、ズバリ〝死神博士〟と仰っていた)らも、よくパンや牛乳を買いに来たこと(佐々木が来店する時はバイクで来ることが多かったという)、当時、『かしわや』から30m程北へ行った場所にスナックがあり、関係者が頻繁に飲み会をしていたこと、また森本レオや津山登志子らも頻繁に来店していたこと(森本レオは『好き!すき!!魔女先生』、津山登志子は『どっこい大作』出演時と思われる)、その『好き!すき!!魔女先生』には、柏倉さんのお子さんも一度エキストラで参加されたこと(手当てはお弁当+700円だったが、出演場面はカットされたという)などなど、当時からスタジオ近くでお店を構えていらっしゃったからこそ体験し得た貴重エピソードのオンパレード。
そんな楽しいお話を伺うことは、もう叶わない・・・。

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上:2004年4月
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左:2004年4月
右:2011年7月
いつも屈託の無い笑顔で相手をしてくださった、『かしわや』の店主、故・柏倉ミエ子さん。
初めて訪れた時には、未だ当時のままだったお店の看板は、後年に改修された。


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上6枚:『仮面ライダーV3』第27話より
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上:2010年12月
掲載した映画像は、当時の『かしわや』店舗上部が記録された希少な一連で、『仮面ライダーV3』第27話「生きかえったゾル・死神・地獄・ブラック」において、猛毒ガス・ギラードガンマーを散布するデストロン戦闘員。
トラックは、『かしわや』の前の道路を南から北へ走行している。


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上3枚:『どっこい大作』第29話より
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上:2016年4月
『東映生田スタジオ』作品において、『多摩美界隈』がロケ地として多用されたのは、これまで述べてきたとおり。
しかしながら、『かしわや』をそのフィルムの中に見つけることは、思いの他容易くない。
但し、『どっこい大作』は例外。
中でも第3クール以降は、近くのお店を舞台に描かれたため、多くは僅かな映り込みではあるものの、結果としてその外観が数エピソードで記録されることとなった。
自動販売機が設置されていた場所には、当時、ベンチとアイスクリームの業務用冷凍庫が置かれていたことが分かる。


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左:『どっこい大作』第44話より
右:2004年4月
掲載した映画像は、『どっこい大作』第44話「ひらけハスの花」におけるワン・カット。
背後の看板は、まさに『かしわや』の旧看板。
色褪せてはいるものの、2004年4月の段階では、未だ使用されていたことが分かる。


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左:『どっこい大作』第23話より
右:2016年4月
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左:『どっこい大作』第30話より
右:2016年4月
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左:『どっこい大作』第31話より
右:2010年12月
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左:『どっこい大作』第33話より
右:2009年10月
「ロープで車の通行を止めて、前の道路でも色々と撮影をしていましたよ」(談/柏倉ミエ子氏)
柏倉さんは、具体的にどの作品、どの(ような)シーンだったかは憶えていないと仰っていたが、その多くは『どっこい大作』であったことは間違いない。


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左:『どっこい大作』第54話予告より
右:2016年4月30日
掲載した映画像は、『かしわや』の南側から捉えた、『東映生田スタジオ』作品では珍しいアングル。


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左:2009年8月
右:2009年10月
「お酒は売ってないですか?」
『仮面ライダー』制作時、突然、藤岡弘が来店。
しかし、『かしわや』ではお酒の取り扱いはしていなかった・・・が、柏倉さんは、咄嗟に貰い物の瓶ビールがあったことを思い出されたという。
「置いてないです。けど・・・もし、貰い物でもよろしければ・・・」
彼は、手渡された瓶ビールを握りしめるや否や、「じゃあ、お言葉に甘えて」と、その場で立ったままラッパ飲み!
掲載した写真は、藤岡がそのラッパ飲みをしたという、店を入ってすぐ右の場所。
「あっという間の出来事でしたけど、よく憶えていますよ」(談/柏倉ミエ子氏)


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左:2010年4月
右:2012年9月
『東映生田スタジオ』の北側には『よみうりランド』があり、言わずもがなそこは「東京ヴェルディ」の本拠地でもある。
そのユース以下の選手の中には、『小田急線/読売ランド前駅』から徒歩で練習に通う子供たちも少なくない。
彼らにとって、『かしわや』は、もう一つのクラブハウス的存在だったのかもしれない。
事実、レジの背後には、歴代選手のサイン色紙や写真が駄菓子と同じく所狭しと飾られていた。
「都並くん(編注:都並敏史氏)は、中学生の頃、練習帰りにお菓子やジュースを買いによく立ち寄ってくれました。澤さん(編注:澤穂希氏)も時々来ましたよ」(談/柏倉ミエ子氏)


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左:2007年12月
右:2012年9月
『東映生田スタジオ』に纏わる興味深いお話や周辺の変遷、更には観光地から政治経済まで、幅広くご教授頂いた柏倉さん。
帰り際には、いつも決まって商品である駄菓子を袋に詰めてくださった・・・。
「いいんですよ。どうせ道楽でやっているようなものですから」(談/柏倉ミエ子氏)


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上:2012年9月
「当時、朝6時くらいに窓を開けると、スタジオ関係者の出勤風景がここにはありました。普通は駅の方へ向かうのに、逆に駅の方から来る人はみんなスタジオ関係者だったんです。死神博士も歩いて来ていましたよ。子役として出演していた人達も学校を休んで来ていたんでしょうね。撮影の休憩時間なんかにはよくお菓子を買いに来ましたよ。みんな、礼儀のいい子でした」(談/柏倉ミエ子氏)


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上2枚:2016年9月
開業は1969年。
まさに、『東映生田スタジオ』の歴史を知る生き証人ならぬ、生き証店だった。
2016年、スタジオに通った人々の悲喜こもごも、そして多くの子供たちの成長を見守った『かしわや』は、その歴史に幕を閉じた。


(映画像掲載作品)放映順
『どっこい大作』第23話「ダメなオヤジの子守唄!!」(1973/6/18)
『どっこい大作』第29話「ヘンな奴らが集まった!!」(1973/7/30)
『どっこい大作』第30話「男一匹こなごなだ!!」(1973/8/6)
『どっこい大作』第31話「ふくらめ!パンパカパン!!」(1973/8/13)
『仮面ライダーV3』第27話「生きかえったゾル・死神・地獄・ブラック」(1973/8/18)
『どっこい大作』第33話「殺し屋にパンを投げろ!!」(1973/8/27)
『どっこい大作』第44話「ひらけハスの花」(1973/11/12)
『どっこい大作』第54話「ウソとハチのムサシ」予告(1973/1/21)第54話は1973/1/28放送


Phase013 End


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