Phase026 【ロケ地】川崎市麻生区多摩美/多摩美界隈③PartⅥ

(編集前記)
Phase018で一時中断していたロケ地(『小川商店』以北)の考証を再開したいと思います。



ここに、二つの証言(述懐)がある。

一つは、『かしわや』の店主、故・柏倉さんの証言。
「あの頃、ここから30㍍程北へ行った所にスナックがありまして、スタジオ関係の方々がよく飲み会をしていましたよ」

もう一つは、「魂の仮面ライダー爆談!![COMPLETE+]」(著/村枝賢一 鴬谷五郎 2011年/辰巳出版)に掲載された、内田有作と村枝賢一氏(『仮面ライダーSPIRITS』原作者)との対談で、『東映生田スタジオ』の昼食事情について触れられた部分―。
村枝 「あと、生田に関しては言えば、周りにメシ屋も少なかったんですよね?」
内田 「メシ屋なんかなかった。」
村枝 「二軒ぐらいしかなかたって聞きました(笑)」
内田 「いやいや、最初は一つもなかったけど、そのうち生田の通りに蕎麦屋が出来たんだよ」
村枝 「あぁ、途中で出来たんですね」
内田 「そう。最初は駅前まで歩いて行かなきゃなかった」
(原文一部改)

ここで、内田の言う〝生田の通り〟とは、『かしわや』や『小川商店』の前の通りと考えてまず間違いない。
しかし、現在、その通りには、スナックがなければ蕎麦屋もない。
あるのは住宅のみで、飲食関係のお店自体がない。

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上:『イナズマン』第17話より(映①)
これは、『小川商店』前で撮影された、『イナズマン』第17話「謎の対決!ふたりの渡五郎!!」において、渡五郎(演/伴直弥)が住民から轢き逃げの容疑を掛けられ、追及を受けるシーン。
よく見ると、『小川商店』(薄茶色の日差し除けのある店)の奥に、白い文字の書かれた黒い日差し除けが確認出来る。
これが、前述のお店の正体である。
では、スナックなのか、蕎麦屋なのか?
その答えは、『仮面ライダーV3』第27話「生きかえったゾル・死神・地獄・ブラック」の映像に隠されていた。

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上:『仮面ライダーV3』第27話より(映②)
これは、映画像①とは逆に北側から捉えたアングルで、バイクに跨る出前持ちの背後が『小川商店』。
映画像①に写る群衆は、この辺りに立っていたこととなる。

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上2枚:『仮面ライダーV3』第27話より(左:映③ 右:映④)
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上2枚:『仮面ライダーV3』第27話より(左:映⑤ 右:映⑥)
映画像⑤、⑥は、それぞれ映画像③、④を拡大したもの。
黒い日差し除けは蕎麦屋のもので、店名を『らんど戸隠』といった。
そして、映画像②からも明らかなように、同じ棟内にスナックも存在したのである。
映像では、硝子扉が開いているため、文字が反転しているが、店名を『Snack司』といった。

S028003
上:2009年10月
映画像②の現在の様子。
アコーディオン式のシャッターがある場所が、かつて『小川商店』があった箇所。
そして、白い建物の左のシャッター部分に『らんど戸隠』、その右側に『Snack司』があった。
『かしわや』の故・柏倉さんが仰った〝スナック〟、内田有作が述懐する〝蕎麦屋〟は、かつてここに存在したのである。
右に見える階段にのみ、往時の名残が感じられる。

前述したように、村枝賢一氏との対談時、内田は、当時の『東映生田スタジオ』周辺の飲食店事情について、「メシ屋なんかなかった」「最初は一つもなかった」「最初は駅前まで歩いて行かなきゃなかった」と、証言している。
『東映生田スタジオ』が開設されたのは、昭和46年2月1日。
しかし、「川崎市稲田地区明細地図 昭和46年度版」(経済地図社)には、後に『らんど戸隠』、『Snack司』が建つ箇所に「小料理 山路」というお店の名が記されており、内田の証言とは明らかに矛盾する。
一体、どういうことか?
この経済地図社の住宅地図では、居住者の増加を▲、同変更はの記号が付記されており、以下の変遷を辿っている。
(昭和44年) 用地
(昭和46年) ▲「小料理 山路」
(昭和48年) 『Snack司』
(昭和50年) 『Snack司』 『らんど戸隠』
つまり、これだけをそのまま捉えると、昭和46年、用地だった場所に「小料理 山路」が建てられ、次いで昭和48年に居住者が変更、「Snack司」になったこととなる。
内田の言う〝蕎麦屋〟とは、「小料理 山路」のことだったのだろうか?
同店が、昭和46年でも随分と月日を経てから建てられたのであれば、それも分からなくもない。
しかし、〝蕎麦屋〟と〝小料理〟を勘違いするとはさすがに考え難く、やはり彼の言う〝蕎麦屋〟とは、『らんど戸隠』と考えて、まず間違いないだろう。

ところで、昭和50年、その『らんど戸隠』には▲もも付記されておらず、また昭和48年には名前さえ記されていないことから、おそらくこの住宅地図は、前年の増加、変更をもとに作成されたものであることが予想される。
つまり、昭和45年、昭和47年、昭和49年は調査年だったと。
例えば昭和48年度版は、前年の昭和47年に調査が行われ、それをもとに記載されたというように、当時のそれは一年置きに実施されたとは考えられないだろうか。
事実、、地元の川崎市内の図書館を始め、国会図書館でも、この三年分の住宅図は存在を確認することが出来ない。

すると、『らんど戸隠』は、昭和47年の調査以降、昭和48年内に建てられた(増加した)とは考えられないだろうか。
昭和50年度版に突如、その名前が『Snack司』と同地に現れたにも関わらず、▲が付記されていないのが何よりの証左である。
また、そうでなければ、映画像②の説明がつかない。
映画像②、つまり『仮面ライダーV3』第27話が放送されたのは、1973年(昭和48年)8月18日。
この段階(撮影は、1973年6月頃か)で、『らんど戸隠』は既に存在しており、建てられたのは昭和49年でないことは明らかである。

そう考えると、「小料理 山路」は、昭和43年の調査が行われた後、昭和45年の調査以前に建てられたこととなり、前述、内田の証言が正しいとするならば、彼が折田至と初めてこの地を訪れた昭和45年12月には早くも閉店(Phase008参照)、昭和46年度版に「小料理 山路」が記載されているにも関わらず、「メシ屋なんかなかった」と、彼が述懐したのにも合点がいく。

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S028008
上2枚:『仮面ライダーV3』第7話より(左:映⑦ 右:映⑧)
下:2009年10月
映画像①同様、『仮面ライダーV3』第7話「ライダーV3怒りの特訓」では、一部、『らんど戸隠』、『Snack司』を南側から捉えたアングルが確認出来る(ここにも、「パイゲンC」が・・・)。


ある『東映生田スタジオ』作品のロケ地を解明するにあたっては、種々のアプローチ法があるが、同作品の他エピソード、或いは他の『東映生田スタジオ』作品に映し出される風景が、その突破口になり得ることは決して珍しいことではない。
『仮面ライダー』第76話「三匹の発電怪人シードラゴン!!」において、「怪獣カンヅメ・モンスター」を販売していたタバコ屋として使用された『小川商店』も例外ではなく、その解明の過程で『仮面ライダーV3』や『イナズマン』の果たした役割は非常に大きかった。
しかし、もっと早くに『どっこい大作』にアプローチ出来ていれば・・・。
その第3クール以降、『小川商店』が、「ハッピーパン」としてメインロケ地に使用されたのは、前述したとおり。
そのため、隣にあった『らんど戸隠』、『Snack司』も、多くのエピソード、多くのシークエンスにおいて、その在りし日の姿がフィルムに収められることとなったのである。
以下に、その一部を掲載する。

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左:『どっこい大作』第30話より
右:2016年4月
劇中、『らんど戸隠』は、「日の出屋」という設定で使用された。
「仕出し 弁当 折詰」の部分に、元々何が書かれていたかは不明。

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左:『どっこい大作』第32話より
右:2016年4月
『Snack司』前を小走りに駆ける女性。
尚、これは、あくまで愚見だが、この女性、若かりし日の故・柏倉ミエ子さんに思えてならない・・・。

028014 S028009
左:『どっこい大作』第35話より
右:2010年12月
映画像⑦、⑧とほぼ同様のアングル。
この道の先に、『東映生田スタジオ』、もとい「細山スタジオ」があった。

028016 S028015
左:『どっこい大作』第37話より
右:2016年4月
「日の出屋」の暖簾の背後に、ガラスケースに並んだ、『らんど戸隠』のメニュー・サンプルが確認出来る。

028017 S028016
左:『どっこい大作』第37話より
右:2012年9月
硝子扉が閉められた状態の『Snack司』。
〝司〟の文字が、はっきりと確認出来る。

028018 S028018
左:『どっこい大作』第38話より
右:2016年4月
〝手づくりの味〟と書かれた水色の箱は、映画像②でも確認することが出来る。
前述したように、『仮面ライダーV3』第27話が放送されたのは、1973年(昭和48年)8月18日。
『どっこい大作』が、間もなく第3クールの折り返し地点を迎えようとしていた頃であり、前後して、二作品の制作(撮影)が同時に行われたと思われる。
尚、『どっこい大作』は、第38話、第39話(第3クール)の撮影が終了した1973年8月1日を以って、一度制作を休止しており、第40話(第4クール)の撮影が再開されたのは、実に三十九日後の9月10日であった。

028019 S028020
左:『どっこい大作』第38話より
右:2016年4月
北側のブロック塀が現存しているのが分かる。
奥に見えるツインの看板下段は、「パイゲンC」。



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左:『どっこい大作』第31話より
右:2016年4月
掲載したのは、『どっこい大作』第31話「ふくらめ! パンパカパン!!」で、孫一(演/由利徹)が高級車で「ハッピーパン」前に乗り付けるシーン。
背後に写るのは、故・柏倉さんのお母さん宅にあったガレージ部分で、『らんど戸隠』のほぼ正面に位置していた。

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左:『どっこい大作』第37話より
右:2016年4月
現在、ガレージは既に取り壊され、邸宅が建てられている。

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左:『どっこい大作』第31話より
右:2011年7月
掲載した映画像で、トラックの背後(絵手前)に写るのは「神尾アパート」(当時)。
つい最近まで、西側二階部分には往時の面影が残されていた。
因みに、「神尾アパート」は、その後、「北陽荘」と名前を変えて経営されていたが、現在は個人邸宅となっている。

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左:『仮面ライダーV3』第27話より
右:2011年7月
『仮面ライダーV3』第27話において、デストロン戦闘員が猛毒ガス・ギラードガンマーを散布するシーンの一部で、「神尾アパート」の二階部分が映し出される。

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左:『イナズマン』第15話より
右:『イナズマン』第17話より
共に、『イナズマン』で映し出された「神尾アパート」の二階部分。

S028032
上:2016年4月
「神尾アパート」の現在の姿。
前述したとおり、最近になって、洒落た邸宅に改築された。

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上2枚:『仮面ライダーV3』第17話より
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上:2008年12月
掲載した映画像は、『仮面ライダーV3』第17話「デビルスプレーは死神の武器」で、デストロンの怪人・スプレーネズミが細菌兵器デビルスプレーを一般市民に噴射するシーン。
スプレーネズミが立つのは、「神尾アパート」の北西角。
たくさんの鉢植えが置かれている場所に、当時、青い階段が設置されていたことが分かる。
青いペダルカーに乗っていたお子さんも、当然『仮面ライダーV3』に夢中になっていたことだろう。
但し、前述したように、この僅かに残された雰囲気も既に感じることは叶わない。

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上2枚:『仮面ライダーV3』第27話より
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上:2012年11月
ギラードガンマーの犠牲者が横たわるのは、「神尾アパート」北側の路地。
この路地の反対側(北側)には、『仮面ライダー』で使用されたあのロケ地が・・・。

(主参考文献)
「魂の仮面ライダー爆談!![COMPLETE+]」(著/村枝賢一 鴬谷五郎 2011年/辰巳出版)
「川崎市稲田地区明細地図 昭和44年度版」(経済地図社)
「川崎市稲田地区明細地図 昭和46年度版」(経済地図社)
「川崎市多摩地区明細地図 昭和48年度版」(経済地図社)
「川崎市多摩地区明細地図 昭和50年度版」(経済地図社)


(映画像掲載作品)放映順
『仮面ライダーV3』第7話「ライダーV3 怒りの特訓」(1973/3/31放送)
『仮面ライダーV3』第17話「デビルスプレーは死神の武器」(1973/6/9放送)
『どっこい大作』第30話「男一匹こなごなだ!!」(1973/8/6放送)
『どっこい大作』第31「ふくらめ! パンパカパン!!」(1973/8/13放送)
『仮面ライダーV3』第27話「生きかえったゾル・死神・地獄・ブラック」(1973/8/18放送)
『どっこい大作』第32「パンで突っこめ-パン!?」(1973/8/20放送)
『どっこい大作』第35ウソかマコトか?パンで勝負だ!!「」(1973/9/10放送)
『どっこい大作』第37父ちゃんがいた!!「」(1973/9/24放送)
『どっこい大作』第38「今に見てくれおッ母さん!!」(1973/10/1放送)
『イナズマン』第15話「影をくわれたお母さん」(1974/1/8)
『イナズマン』第17話「謎の対決!ふたりの渡五郎!!」(1974/1/22放送)


Phase026 End


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コメント

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No title

戸隠そばさん、懐かしいです。
新百合ヶ丘に移転(鶴川街道沿い)され、何回か行ったことがありますが、
今でもご健在なのでしょうか。。。

Re: No title

アマゾン 様

その後につきましては、残念ながら把握出来ておりません。

店主の方にも色々とお話を伺いたいものです・・・。
幾つか飲食店内が映るシーンがあるのですが、具体的にどのお店なのか分からないものもあります。
中には『戸隠』もあるかもしれませんね。

引き続き宜しくお願い致します。
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東映生田スタジオと同作品ロケ地研究の場です。

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